2007年5月29日火曜日

『共産主義運動年誌』第八号発刊にあたって

 当初予定からおよそ半月遅れで、前号より少しスリムになった第八号をお届けする運びとなった。多少とも編集作業については回数を重ねたので、この難渋と身痩せは技術に伴うものではない。手前味噌を承知で言えば、世界とわが国社会との激動が、いよいよ政治社会変革の主体の問題に凝縮されつつつあることの徴と受け止めている。それゆえ会員それぞれの論稿の構成が現れた。この数年来の『年誌』としての次の発展に向かう活動の胸突き八丁であり、そして峠は見えてきたように思われる。

 本年三月に行われた、第九回全体会は次のように確認した。

 まず、「わが『年誌』の活動は、着実にその総合的力量を養い、社会的な存在として堅実な基礎を固めて、次の転換と飛躍を探る段階に入っている」、「こうした活動のために、「コミュニケーションの場」としての『年誌』の活動性格を尊重しながら共産主義運動の発展を目的とする政治的理論的討論の強化を進める。」という第八回全体会の確認を引き継ぎ、さらにこれに踏まえ、会員の要求に応えるための、その現実化のスモール・ステップを次のように提起した。「『年誌』編集活動、事務局活動の強化、『年誌』の『共同政治理論誌』化がそれであり、具体的には事務局メンバーの補強、編集活動・事務局活動における政治的討論の強化である。」「この新しい『呼びかけ』作成討論と共に、向こう一年間の『年誌』活動の課題として改めて提案する。」「情勢に即応するプロ独・共産主義、反改憲の主張を促す試み」に取り組むことなどがそれである。

 こうした確認の幾分かはすでに本号に反映されている。編集のブロックは、従来の構成を踏襲し、より明確なものとすることとした。〈情勢と政治〉における流論文は、発展のための『年誌』の課題と指針を積極的に提起したものであり、これは旭論文、畑中論文が示す、階級闘争の今日的な展開と一体をなすものである。〈闘争と報告〉の飯島さん、伊藤さん、大来さんの、各論文は『コム・ネット』の仲間との共同による「労働運動シンポ」の活動の反映である。これは「労働運動プロジェクトチーム」の理論的な課題でもあり、岩田論文が示唆する実践の展望と結合することが求められている。〈理論と考察〉の旭さん、志摩さん、白井順さんの各論文は、理論小委員会の、新左翼における理論的背景の、重要な一つとしての広松哲学検討の活動の集約である。斎藤論文は、レジュメながら、現在進められている『年誌』関西グループのシンポジウムでの活動の一端を反映したものであり、全体的な共有化が求められているものとして受け止め掲載をお願いした。巻末には白井朗さんの寄稿論文を配置した。いうまでもなく白井朗さんは、ブントと並ぶ、わが国社会における新左翼の源流としての革共同の創設期以来のメンバーである。新左翼運動の発展成長を大きく疎外した「内ゲバ」問題への真摯な反省と、それに踏まえた新左翼運動総括の発展にとって不可欠の政治思想的課題であり、この論稿はそのための貴重な貢献と考えたからである。同時にブント系のものとは別の視点からの、もう一つの新左翼総括であり、創成期の歴史的証言でもある。

 国民投票法案は、五月中には参院での強行採決が行われ、可決成立の見通しといわれている。また、沖縄・辺野古への米軍新基地建設のための調査を強行するために海上自衛隊の投入が決定されたとの報道もある。安部・自公政権の下で、日米軍事一体化、九条改憲に向かう支配階級の反動攻勢は激しい。他方で、労働者人民への搾取・収奪の強化、福祉切り捨て、「社会的格差拡大」が強められ、これに対する反撃も、青年労働者を先頭とする非正規・不安定雇用労働者の闘いの拡大としてはじまっている。世界的な階級闘争の高まりが、ようやくわが国社会に及ぼうとするその兆しが見えてきた。わが『年誌』は共産主義運動がこの闘いに積極的に関与し、貢献するための準備をすすめていく、我々の活動への一層の注目と、さらに多くの仲間の結集を呼びかける。

二〇〇七年五月

『共産主義運動年誌』編集委員会事務局