2007年5月23日水曜日

『共産主義運動年誌編集委員会結成の呼びかけ』案

【1】情勢と主体

1 世界資本主義は恐慌前夜を思わせる時代に入った。

2 世界経済の中心部では多国籍企業資本主義による大規模な資本攻勢がかけられている。

3 世界経済の周辺部では、新自由主義・多国籍企業主導の工業が挫折した。

4 新たにここに組み入れられた旧ソ連・東欧圏においても、ロシアの資本主義化が破綻した。

5 世界経済危機の中で地域的規模で噴出する政治的軍事的対立を押さえ込むために、NATO、日米安保体制など政治軍事同盟の再編強化が日程にのぼせられている。

6 資本の世界的運動と巨大技術による資源収奪は地球的規模での生態系破壊をもたらし、人類の身体と精神に及ぶ危機をもたらしている。

7 いまや破局に近づく帝国主義の世界的支配を打ち破り、これにとって代わるべきプロレタリアートの国際的団結と布陣が要請されている。

8 この今日の資本主義の新しい局面の中で、これに対決する共産主義運動の主体の再建は不可欠の課題である。

9 我々はおおむねマルクス・レーニンの思想と実践を現代に歴史に実現しようとしてきたが、ソ連・東欧の「国家社会主義」体制の崩壊は、その立場についての根本的な再検討と反省を促している。

10 我々はこうした理論と実践にわたる課題の実現を通じた、共産主義運動の主体の再建のために『共産主義運動年誌編集委員会』の結成を呼びかける。

【2】我々の共通認識

 〈資本主義・帝国主義批判〉

1 資本主義社会は、基本的に資本―賃労働関係によって編成されており、それは自由・平等な市民社会と商品の等価交換を形式上のルールにしているが、実際は資本の下への労働者階級の経済的隷属に基づく賃金奴隷制社会である。

2 資本主義に対する批判は、労働の資本の下への形式的・実質的包摂、したがって絶対的・相対的剰余価値の生産に対する批判がその核心的内容である。

3 この核心をつかむことによって、今日の高度に複雑化した社会における技術や労働様式の変革をともなう労働過程、労働力再生産・消費過程、、分配・交換過程にたいするトータルな批判が可能になる。

4 資本の集積と集中は金融独占資本主義を生み出し、さらにその成長は国家独占資本主義をへて、今日の多国籍企業資本主義・国際独占体の形成に至っている。

5 それは非閉鎖的ブロック的市場分割戦の激化と危機の相乗化を促している。また周辺諸国の労働者・農民の底辺化を拡げた。帝国主義では資本と科学技術支配のもと、大規模な労働の階層分化・失業をつくり出した。さらに再生産過程や農村への支配を拡大した。そして今やそれらの大規模な動揺が始まっている。

6 この今日に至る資本主義の危機の克服と延命の歴史は、それ自身の生み出す労働者階級の意識的能動的な階級闘争によってしか廃棄されない事を示している。

7 またその歴史は同時に、階級闘争の意識的能動的主体としての労働者階級が、複雑になった社会の中で、彼ら自身が経済的社会的政治的に階級的に行動し、政治社会変革を領導することによってしか形成されないことも示した。

8 したがって我々の目標は、この多国籍企業資本主義・国際独占体の支配する社会の革命であり、その基礎に立つ帝国主義世界体制そのものの打倒であり、それを自らの事業とする労働者階級の階級形成である。

9 資本―賃労働関係はひとつの権力関係であり、それは論理的にも歴史的にも国家権力と分かちがたく結び付いている。

10 したがってその廃棄は、階級闘争の末に、職場・地域において、社会・経済・政治・文化のそれぞれの領域で、労働者階級が資本家階級の権力を破壊し、自己権力を構成し、国家権力を掌握することなしにはありえない。

11 一つの社会が敵対する二つの階級の戦争状態におかれたとき、労働者階級はその社会の維持と、国家そのものの廃棄・自らの経済的解放のために非常的一時的に革命独裁の権力を発動する。

12 その力量は不断の資本主義批判・帝国主義批判に基づく階級闘争と国家批判、それを通じた世界的一国的な被抑圧被差別人民大衆との団結の経験によって獲得されるほかはない。

13 その領域は、①軍事・外交、国家統合・治安に対する職場・街頭での直接行動と、議会における政治闘争、②被抑圧人民、被差別大衆との地域・農村(再生産過程・労働力再生産過程)における統一の行動、③労働運動などなどである。

14 今日の日本帝国主義国家権力との闘争では、日本国家の解体、反戦・反安保、沖縄人民の自立解放闘争への連帯、などがその政治路線的骨格をなしている。

〈組織活動〉

15 近代国民国家においてはその政治的意志統合を目的とする国民政党は、支持基盤の階級的差異はあっても、事実上は支配的階級を代表する一つの政党に帰着する。

16 マルクス主義的階級政党は階級のありかたの多様さから、先験的には単一化されず、労働者階級が権力に到達したときに、事実上の統一が達成される。それは新たな課題・論争の出発である。

17 だから先験的に単一党を想定するのは必然的にイデオロギッシュな前衛ショーヴィニズムになってしまい、結果として前衛を自称する諸セクトの対立抗争を生み出し、勤労人民の党不信を助長することになる。

18 労働者階級の政治権力の樹立に至る政党の形成は、今日的にはそれzそれの部分性を承認しあった諸分派、党以前の諸政治結社の連合の一時代を想定しなければならない。

19 それぞれの分派・結社の権力闘争と階級形成の実践の蓄積から、連合と統一をへて労働者階級、勤労人民の信頼をかちえる党を形成すること、権威主義的政党・他党派解体路線を否定することからしか現実的な党建設は始まらない。

20 同時にそれぞれの分派・結社における総合的政治組織力量の蓄積と、個々の組織の責任制に踏まえたその枠組みを越えた路線論争、組織的闘争によって共産主義運動の新しい展望を開くことが求められている。

〈共産主義運動の歴史的教訓とイデオロギー活動〉

21 ロシア革命とレーニン主義の遺訓を引き継ごうとする我々が、今日の共産主義運動の再生を果たすためには、ヨーロッパ革命の挫折や、21年分派禁止決議に象徴される限界を突破することが求められる。

22 またもう一つの革命運動における世界史的経験としての中国革命の総括も重要な課題である。とりわけ文化大革命における精神労働と肉体労働の分裂の止揚とコミューン、過渡期における階級闘争の継続などの理念的正当性と、他方での労働の量による分配に資本主義復活の可能性を見いだし走資派規定を行ったことや、機械制大工業の下での管理、分業、規律、経済計算をブルジョア的支配に単純化してしまったことの誤りの正反両面の教訓が問われる。その後の民主化運動における結社の自由、労働組合の権利、自主管理の主張は正当に評価されるべきである。

23 今日のネオ/ポスト・マルクス主義、日本資本主義論争、初期マルクス論争などの新旧の日本マルクス主義、エコロジー派の提起などから、その成果の摂取を行うと共に、積極的な論戦を行うことによって、マルクス主義の再生が目指されなければならない。

一九九九年一〇月二二日

共産主義者同盟首都圏委員会
プロレタリア通信編集委員会