2007年5月27日日曜日

『共産主義運動年誌』第六号発刊にあたって

 『共産主義運動年誌』第六号をお届けする。ご多忙ななか出稿、寄稿していただいた会員や友人の皆さんには感謝のほかはない。長年とりくまれてきた農の現場からの報告などが新たによせられページ数がすこしふくらんだ。このことは、開放されたメディアへの本誌のささやかな歩みをしめすものといえよう。「共産主義運動の主体の再建ならびに、多様な社会変革運動の前進に資すること」を目的に、「理論と実践に関するコミュニケーションの場」の充実をめざすわたしたちにとって、現代の国家と社会の矛盾を切り裂いていく多面的な言説を欠くことはできない。
 編集発行にあたり、今号も第四号からはじめた可能なかぎりの内製化につとめたが、いまだアマチュアリズムの域を大きくでていないことを自覚している。こんごも技術的向上をめざす心意を表明したうえで、各論稿や報告にこめられた内容をくみとっていただくことを読者の方々にお願いしたい。
 さて、二〇〇〇年三月に結成された共産主義運動年誌編集委員会は六年目の活動にはいった。本年三月に開催された第七回全体会では、過去五年間の活動をふりかえり、今後の中長期的な展望をどうえがいていくかについて議論がはじまっている。採択された議案の一節を引けば、共産主義革命運動の現状をめぐって「国家権力奪取がさしあたり切迫した目標とはならない現状であることを共通認識としながら、革命主義的行動を中心に考えるのか社会的ラディカリズムの具体化に力点をおくのか」という、結成以来の内部論争は依然として重要な論点でありつづけている。さらに、「問題は、『年誌』の組織としての現状が、煮え切らない政治的不決断によるものでないとすれば、『あるべき党』への途上性、過渡性に由来するものか、統合運動の手痛い失敗の経験による『羮に懲りて膾を吹く』というたぐいの世間知によるものか、それとも、理論的研究のような活動の本来的な性格に基づくものか、一定の組織原理を想定したものであるのか? というところにある。この点を相互討論のテーマとすべき段階に入った」ことも確認された。もちろん、かんたんに答えを引き出せるわけでもなく、会内外の議論の活性化と叡智の結集がいっそう問われているといってよい。
 会結成後、世界情勢は大きく変化した。〇一年のセプテンバー・イレブンを機にアフガニスタン、そしてイラクにたいする米国の帝国(主義)的な侵略戦争が勃発したこと、また、それにたいする国際反戦闘争の盛り上がりである。日本の小泉政権は、米英による中東侵略戦争に自衛隊派兵をもってこたえたばかりか、その既成事実をてこに憲法改悪、国連安保理の常任理事国入りをもくろんできた。それにたいして、この間、中国・韓国において両国支配層の思惑をこえる大規模な反日運動が展開され、東アジアの政治的緊張も一段とたかまっている。この事実は、日本における反戦・反占領闘争や反改憲世論が一国的な枠組みでは前進できないことをあきらかにしたのである。じっさい、掲載稿にあるように、日本に滞在し生活しているイラン人やクルド人などへの入管行政当局による強制的な収容・送還攻撃が激化している。わたしたちのようなコミュニケーション団体も、二一世紀初頭の世界のアクチュアrティからみずからを切り離すことはできず、しかも、特権的な前衛に滑り落ちずにコミュニズムの思想と運動をいかに再建できるか、この重たい課題を容赦なく突きつけられているわけである。
 理論問題小委員会では、ここしばらく侘美光彦『「大恐慌型」不況』『世界大恐慌』をテキストに討論がおこなわれた。現在、アメリカの景気回復への不安かから世界同時株安の再来がささやかれている点でタイムリーだったろう。しかも情況の根底には、新自由主義的な多国籍資本のグローバリゼイション運動が、地球環境破壊、第三世界の人民抑圧、先進社会における労働者階級の労働力流動化・断裂状態などをともなって展開されている。このことの解明と批判が本誌にもいくぶんか反映されているはずである。
 プロジェクト・チーム(PT)の活動については、なによりもまず沖縄自立連帯運動PTにかかわって昨年「沖縄日雇労働組合と連帯する会」が発足したことをよろこびたい。また、労働運動PTでは、コム・ネットの仲間たちとの労働組合運動シンポを着実につみかさねてきた。青年学生運動PTでは、沖縄五月旅団のツアー活動をおこない、いわば点と点をつなぐ活動が継続されている。これらのとりくみも今号に少なからずもりこまれている。
 本誌発刊を記念する討論集会は後日あらためてご案内する予定である。国内外の深部の流動をみすえ志をつらぬく多くの人びととの出会いをもとめ、ひきつづき友人、読者の皆さんのわたしたちの活動への注目と積極的な参加をよびかける。
(二〇〇五年五月)
『共産主義運動年誌』編集委員会事務局