2007年5月28日月曜日

議案= 総括 付帯提起 『呼びかけ』をめぐる討論の意見集約と総括

(以下の文章は第八回大会全体会で、畑中事務局長によって報告されたものです。)

 議案= 総括 付帯提起
『呼びかけ』をめぐる討論の意見集約と総括

(0)全般的に

 十分練り上げられていなかったにもかかわらず、好意的な反響をいただいた。感謝の他ない。この反応そのものが共産主義運動の再建に向けた関心のありようを示している。提案者側の見解提起の遅れをお詫びするとともに、現在、会を離れた人の意見を含めて、『呼びかけ』本来の目的に向かって相互の意見の共通点と相違についての理解を深め、さらに多数の団結、連合・統一を展望したい。同時代における政治経験を、それぞれの立場は異にしていてもある程度共有した世代が良好な活動実績を示すことによって、次世代に運動と経験を引き継ぐことを目指したい。
それぞれについての見解を記すに際して、まず、『年誌』の活動と組織の基本性格をめぐる意見と『呼びかけ』の内容全般にかんする見解を扱う。「実践」を含むとした『活動の目的と進め方』の当初提案について、趣旨承認する意見と一定の留保をする意見とがあった。発足にあたってはこれは討論の結果「理論と実践に関するコミュニケーションの場」とすることで合意された。この経緯を蒸し返すものではない。しかし、『年誌』活動のあり方にかかわるので、これへの見解を述べる。
 次に各項目について寄せられた意見について。寄せられた意見は、それが逐条的に記されたものであっても、それぞれ全般についての判断を含んでいる。その確認の上で、これに提案者側の回答を記すこととした。
 なお上記の意見交換は、広くは『年誌』通巻6冊に掲載された諸論考のすべてにかかわるものだが、ここでは、便宜のため、『呼びかけ』とそれへの『意見と対案』が掲載された第1号を主要な素材とすることとした。また、同号には、『呼びかけ』執筆者の一人である旭会員の『呼びかけ』についての補足説明と意見に対する応接の文書も掲載されている。参照をお願いしたい。意見への応接には、遺漏も多々ある。筆者の恣意的な選択によって、論点の取捨選択を行った。重大な論点の見落としがあればご指摘をお願いしたい。重複した論点や、おおむね賛意をいただいたと思われる意見についてはコメントを割愛した。非礼をお許し下さい。また筆者の個別的見解については機会を改めて提起するべく努めたい。

 (1)『年誌』活動・組織の基本性格と『呼びかけ』の全般的内容と構成・スタイルに関する意見について

―高寺さん
 政治革命と社会革命との関連にかかわる、現在までの『年誌』での討論の基本的枠組みの一つを提供した意見である。第二号以降の志摩さん、岩田さんの提起も含めて、『年誌』活動全般の総括の中で捉えて扱うことが必要である。ここでは、論点の後半部(P五一~五三)の意見・批判を扱う。
①「唯物史観の基本を押えたトータルな社会批判になっていない」。「剰余価値とか商品とか対象化されたものの生産の在り方だけに目を向けず、人間の特殊な生産・再生産の在り方にも注目することの重要性」についての認識がかけている。
②関連して「賃労働と資本の関係は、剰余価値実現のための搾取のしくみらしい」との批判的言及。
③「市民社会を資本制的生産社会に等置してみること、又は、実体と外観という風に統一してみることは、いずれも全く誤謬」である。
 それぞれ根拠のある批判、意見である。①唯物史観に基づく社会批判の観点を「呼びかけ」のどこに置くのか研究したい。②資本主義批判の記述が雑駁に過ぎるのはご指摘のとおり。だが剰余価値搾取批判を通じて、労働者は自らの階級的立場を自覚するのではないか。③市民社会認識については、現在も議論は続いている。実践的には、アソシエーション革命や、協同組合運動、人権運動、市民運動、新しい社会運動への評価につながる問題であって、依然として重要な問題と認識している。引き続き意見交換と研究を深めたい。ただ一点、市民概念にしても、労働者|市民にしても、それが理想化された観念として扱われると、人間なるものや、労働者階級なるものが先験的に扱われたときに現れるような、倫理的共同体主義に陥りやすいので、この点につき注意を払いたい。
―松平さん
①「党建設の総括」と「新たな革命党の綱領・戦術・組織の策定」の必要。
②「資本主義を悪として断罪するレベルの範囲」にとどまるのではなく「資本主義」「の(労働手段的―引用者)土台の変化・発展から共産主義革命の必然性を解き明かす。」
③「できるだけ大きな労働者党の建設を闘いとる」。組織統合への躊躇、「分散への安住」があってはならない。
④「米帝の他の帝国主義に対する一定の支配・統制の要素を組み込んだ『国際反革命体制』についての認識」が必要。定型的な党建設観(①、③)が支配的であって、議論の接点が少ない。まずは、私たちへの激励と受け止めておきたい。実践による接点の形成を模索する。
―村瀬さん
 自ら認めるように全般的な視点の違いがあるが、穏当な指摘と批判がなされている。論点は多岐にわたるが、以下、主要なところを確認しておきたい。
①「スターリン主義への批判が欠落している。」
②「『危機論型戦略』を脱しえていない観点」、「旧来型の必然史観|決定論的歴史観の限界があらわ」。
③「『修正資本主義』へのオルタナティブで選択的な倫理的批判・政策介入による構造改革を促進」する。「実現可能な『現実的理想』を掲げた社会主義・共産主義を再構想」する。

 スターリン主義批判の文言がないことはご指摘のとおり。スターリン主義批判を口にすれば批判が実現されるとは思わないが、国際共産主義運動の教訓として研究を深めたい。②は第一次、第二次ブント総括にかかわる。危機、恐慌に関する現実認識については、相違を確認することで終わった。ブント総括にさかのぼって議論の糸口を見出すことは可能か?今はわからない。この論点と結びついて修正資本主義への倫理的批判、構造変革、社会主義リベラリズム(③)が主張された。これは、革命闘争にいたる政策研究としては意味がある。実現性については、主体的力量にかかるので、「現実性」を標榜すれば現実化するわけではないこと、こうした政策の実行を保証する「社会主義リベラリズム」の内実が問われることを確認しておきたい。
 残念ながら現実的には、相当の不信感を残したと考えられるので、これもやはり、実践的な信頼関係の形成からはじめるしかない。
―伊藤さん
 これも全般に渉り多岐に意見が示されている。おもなところを以下採録する。
①「過渡期(プロレタリア独裁国家)の経済的土台は、」「特殊な国家資本主義である」。
②「『商品の等価交換』を『表面上のルール』として『実際には』と対置する規定の仕方を適切とは思えない。」
③「『資本主義批判』論議をになってきた諸氏に、この用語を一度止めて、『変革対象としての資本主義の把握』という一般的な枠組みで、それを捉え返せないだろうか」。
④「『二つの独占』の一方の側(金融資本の形成)にしか触れていないこと、時代規定としての性格をあいまいにして、『金融独占資本主義』『国家独占資本主義』『多国籍企業帝国主義・国際独占体の形成』と言う一面の特徴列挙に終わっていることに同意できない。
⑤「労賃格差を基礎とする超過利潤の収奪が列強諸国の法外な富の源泉であり、それが列強の労働者の多層化やブルジョア化などの重大要因にもなってきたこと」への言及がないこと、「いわゆる『南北問題』として」提起されないことに賛成できない。
⑥『経済学批判 序言』での「上部構造の二つの側面=政治的上部構造(「国家」―引用者)と法律的上部構造(「社会」―引用者)という理解。「『国家』は、国家権力・期間と住民・国民との相互関係(支配統治関係)を、『社会』は直接は政治権力による支配・被支配関係を含まないもの、すなわち住民の相互関係全般などを指している。」
⑦「ソ連・東欧体制崩壊に触れられていないこと、中国革命だけが大きい比重をとっていることに、かなり異様な感を受けた。」
 資本主義から共産主義に到る過渡期について(①)は、さまざまな見解と理解がある。この意見も尊重して、今後の意見交換と研究を深めたい。『呼びかけ』執筆の際に念頭にあったのは、レーニンの「五つのウクラード論」である。「国家社会主義」という耳慣れないタームは、和田春樹、広松渉から拝借した。もともとはエンゲルスの『エルフルト綱領批判』の一節、「社会民主党は、いわゆる国家社会主義とはなんの共通点もない。これは、財政上の目的のための国有化の体系であって、私的企業を国家でおきかえ、そうすることによって労働者の経済的搾取と政治的抑圧との力を一つの手に結合するものである」によるものである。ナチスの場合は、民族社会主義と訳し分けるのが正解ではないか。また、共産主義の低い段階としての社会主義という、マルクス主義の通用的な理解については相対化した理解が必要に思われる。社会主義と、共産主義とは、実体として隣接しているが、起源も内容も異なる概念ではないか。
 ③では、「資本主義批判」という語彙への違和についても指摘されている。確かにブント系の一部で使われだした語彙であるかもしれないが、一定の通用性を獲得しているようにも思える。廣松渉、今村仁司の著作にも用例がある。内容については、伊藤さんが指摘するように、「変革対象としての資本主義の把握」と同義である。資本主義批判の内容については、②で指摘されるように、粗雑なものであるとの評価を受け止めたい。簡潔で適切な記述について研究したい。
 帝国主義論の記述についても粗雑であるとの指摘を受け止め、改善を研究したい。④の見解は、帝国主義を「二つの独占」と理解するところに特徴がある。この点については、今後の意見交換を通じて理解を深めたい。「南北問題」への言及の欠如については、ご指摘のとおりであり、記述のあり方を研究したい。帝国主義的超過利潤の基礎が、「労賃格差」にあるとの理解も独特であるので、今後理解を深めたい。
 唯物史観の構造理解(⑥)については、ご自身も言及しているように、グラムシに近いとの印象をもっている、ターム理解の交通整理にとどまらず、実践的にどのような意味を持つのかの考察を今後の課題としたい。ソ・中の記述のバランスを欠いていること(⑦)はご指摘のとおり。現在のロシアなど、ソ連後継国家の評価、中国評価などとあわせて宿題としたい。
―渋谷さん
①「情勢分析と主体といった発想法の危険性にご注意いただきたい。」
②「恐慌とは何か。」
③「第三世界という認識の仕方がいやだから周辺部という言葉を使っているのだろう。」
 全般的に言って、突き放した印象のコメントをいただいた。意見交換と相互交流の実を挙げることが課題である。「情況と主体という言い方(①)は誤解を招いた。「呼びかけ」作成にいたる提案者の経過説明と、呼びかけを行う立場を表現するべきであった。恐慌(②)は資本主義社会における景気循環の集約点である。景気循環の発現がいかに変容したかを相互の語彙を突き合わせて接近させたい。第三世界(③)という言い方は不正確と考えるので採用しないということである。世界システム論と従属論の解説をすれば足りる。

(2)

【情勢と主体】

―安部さん
①ロシアの資本主義発展と「発展途上国」の階級闘争についての評価の不備はご指摘のとおり。改善されるべきである。
②レーニン主義の限界と社会主義社会論に関連しては、国際共産主義運動総括の深化に努め、相互理解を進めたい。
―流さん
 全般的にML主義用語の立場から社会主義建設の歴史的総括を行う点で共感し、さらに理解を深めたい。
―津村さん
 主体の危機を強調する観点を尊重する。世界的な共産主義運動の一部分としての日本における活動であることの指摘は同意のほかない。

【共通認識】

〈資本主義・帝国主義批判〉

 流さん(資本主義批判を商品生産の定在から説き起こすべきこと)、松平さん(資本主義批判を「労働手段の発達と生産関係の矛盾」から説き起こすべきこと)、安部さん(資本主義的商品生産認識の意義を強調)それぞれの意見に学びながら、記述の明確化に努めたい。
―安部さん
 国際独占体、グローバル資本主義の時代の規定の究明を提起されており、その指摘に添った論理の明確化を試みたい。
―津村さん
 「労働者階級」の規定の再検討が提起されている。共通の課題である。

〈戦術・路線〉

―流さん
 明示的ではないが、政党観や、労働者階級の自己権力=プロ独と『呼びかけ』の言う「革命独裁」との異同が指摘されている。相互理解の課題である。
―安部さん
 政治路線の狭さ(社会保障などへの取り組みの必要性)への批判、国家批判の抽象性、一面性。国家介入、社会政策への注目の必要性が指摘されている。学ぶべき課題である。
中国革命への肯定的評価への批判については、さらに研究したい。

〈組織活動〉

―津村さん
 革命闘争における政党、権力、統一戦線などについての理解への疑問が提起された。実践的検証を含めた意見交換が必要。
― ブルジョア階級の政党制への理解についての疑問が示された。一般的にはご指摘のとおり。記述の再検討が必要である。

運営と【会則】

―津村さん
 国際主義と公開性への指摘。全く異議なし。