2008年8月11日月曜日

『共産主義運動年誌』第9号・発刊にあたって

 『共産主義運動年誌』編集委員会事務局

 『年誌』第9号をお届けできる見通しがついた。昨年8号の発行とほぼ同じく予定よりも半月ほど遅れた勘定になる。予定の遅れが常態になることも、その言い訳を重ねることも見苦しいものだが、ひとえに、昨年を遥かに上回る、会員それぞれの政治活動の繁忙によるものであることは、一言申し開きをしておきたい。昨年来の支配階級による改憲・国民投票法制定攻撃のころから、現在、そしてこの夏から秋にかけてびっしりと政治日程が詰まっている。
 特徴的なことは、世界的にも一国的にもこれが、必ずしも資本と国家の強さを示すものではないということである。確かにわが国社会における民族排外主義の悪煽動や、労働者間の競争と対立をあおる差別支配によって、人びとの表情は険しく、社会の雰囲気はとげとげしい。貧困と窮乏は、ひとにぎりの富裕層を除いて広範な中間層の分解とともに多くの人々の生活の中でのリアルな脅威となっている。この30年来の、世界を席巻してきた新自由主義・グローバリゼーションの結果がこれである。恐るべきは、これを積極的に推進してきた帝国主義・支配階級自身が、この経済社会の破綻状況に手をつかねているように見受けられることだ。湾岸戦争にはじまり、アフガニスタン、イラク侵略戦争を次々と引き起こしてきた米帝国主義が、その戦争の泥沼化に苦悶し、国内経済社会の破綻に直面している。世界的なレベルで、支配階級は国家統合・経済再建の弥縫策を繰り出すものの、そのたびごとにより大きな矛盾を引き出され、結果として事態を打開するための何事も進めることができないという状態が出現している。帝国主義・資本家階級の統治力の衰退が白日の下にさらされている。かつてない事態である。労働者階級・被搾取勤労大衆・被抑圧民族人民がこれにとって代わるほか、展望はどこにもない。
 とりわけわが国社会においては、余りにも長期にわたる低迷と閉塞状況を打ち破って、人間としての自由と権利、生存そのものを求める、青年労働者の広範な台頭が、ようやくにしてはじまった。本年5月3日に東京で行われた『フリーターメーデー』には600人もの青年を中心とする結集があった。東京のみならず、全国の主要都市で、同時の結集があったことにこれが全社会的規模の運動であることが示されている。
 新しい皮袋に盛られなければならない。現在台頭の兆しを見せている運動を育て発展させていくのは、結局その当事者たる青年みずからの事業となるほかはない。ただ、片付かなかった政治的思想的な残骸やガラクタを放り出し、あとから進む人びとのために道を広広と掃き清め、本当に値打ちのある知識と経験を寄贈する作業は、この数十年来の活動に携わってきた人間のなすべきことだろう。わが『年誌』も、去る4月第10回全体会をおこない、この課題を見据えて以下の確認をおこなった。
 「左翼再編の要件について以下の諸問題に留意する。①60年代総括、②7・80年代権力闘争の未貫徹、③ソ連崩壊による蛸壺化。そのうえで、政治協議の具体化、強化を提案する。その課題は①2000年代の権力闘争のあり方、②新左翼総括、自己変革の促進、政治協議の蓄積である。」
 『年誌』9号の編集からも、幾分かはそうした意図を読みとっていただければ幸甚である。『改憲反対共同声明』はコミュニケーションの場としての『年誌』のあり方を尊重しつつトライした、政治協議、共同の試みである。『共同声明』作成の意図と経過、問題意識を紹介した『関西共産主義運動』シンポ(KCM)の文書も、共通する問題意識によって起草されたものと理解している。世界的なスケールと歴史的展望を織り込んだ政治的宣言であり、今後の相互討論のベースとして扱っていきたい。この一年間、当会内外に渉る有意義な意見交換と相互協力を積み重ねて次の展望を開きたい。多くの仲間の引き続きの注目と参加を呼びかける。
                                            2008年5月